例えば、汚れや水を簡単にふき取れるように撥水加工したオイルクロス製の表紙。開きを良くするために、糸綴じ製本を採用。ポケットからの出し入れで引っかからないように、手帳の見開き側の両角はかなり丸く落としてある。
当然、コストが上がってしまうのだが、その代償として納得のいく理由がある。
その機能美に感銘を受けた余韻を残しながら、フロアを移動していると、ふと「Origami」の文字が目に入った。近づいてみると、Microsoftの「Origami」プロジェクトのコンセプトで作られた「Smart Caddie」という製品を紹介していた。
「Origami」プロジェクトの話は知っていたが、libretto U100を購入後だったので、あまり情報収集もしていなかった。買う気は全くないのだが、折角なので触ってみることにした。あまり時間がなかったので、正確な情報ではないものも混じっているだろうし、主観なので、感想自体は話半分に読んでほしい。
手にとって見てまず思ったことは、「大きい」と「重い」ということだ。サイズが228x146x25.1mmで重量が880gあるということなので、PDAのように気楽に持ち運んだり、立ったまま長時間触るのはつらい。基本的にはタブレットPCなので、タッチペンか指で画面に触るのだが、片手で860gを長時間支えるのは、筋力トレーニングの域なのではと思ってしまった =p
目新しいものとしては、ソフトウェアキーボードであるダイヤルキーという扇形に表示されるQWERTY配列のキーボードがある。見た目はとてもいい感じで、配置も親指で押すのには適しているようにみえる。しかし、タッチパネルの反応が、ある程度細いものにしか反応しないようで、指の腹だとほぼ無反応だった。仕方がないので爪を立てる感じでタッチするのだが、両手持ちで支えているのに、親指を立てて入力するのは、指が攣ってもおかしくない。
また、このダイヤルキーを呼び出すハードウェアキーがなく、タスクトレイの小さなアイコンをタップしなくてはいけないのは問題がある。このキーボードは、画面の三分の一程度を覆ってしまうので、オン、オフは頻度が高い操作になるはずだ。
その他にも持ち運んでいる状態(電源OFFや休止状態など)から使える状態になる時間が長いことや、バッテリーの持続時間が最長2時間半程度と短いなど、不満のほうが勝ってしまう印象だった。「ついつい気軽に使ってしまう」というには手軽さが足りない。
移動中にというよりは、部屋の中やオフィスで座った状態で、ひざの上において使うということだろうか。何でもできるPCの代わりとして、この製品を見ると不満点が目立ち、ある機能にしても、あと一歩と感じることが多い。なによりもこの製品を使って、何をして欲しいのかが伝わってこなかった。
「Origami」プロジェクトの開発コードネームの由来は、「日本の折り紙のように、なんにでも形を変える」ということかららしいが、今成功している製品というのは、特定の機能に特化して、余計な機能を省く代わりに、どうやって使うのかや、ライフスタイルまで提案しているものが多い。
冒頭で紹介したMOLESKINEも、手帳として必要最低限の機能性があるだけで、決して多機能ではない。必須でないものは全て落とす代わりに、必要な部分には細部までかなりの「こだわり」が感じられる。作っている側が、この手帳を使う人の姿をはっきり見ているからこそ、その「こだわり」が生まれ、使う側も身近なものとして共感できる。
「Origami」プロジェクトには、是非、MOLESKINEを見習って、「なんにでも使える」ではなく、「こだわり」を感じて、納得できるものを生み出して欲しい。